vagina bevalling vrouwen
Ingrid Bourgault

出産経験者が率直に語る、産後のヴァギナの話

痛み、身体の違和感、見た目の変化……。親になったばかりの女性たちが、誰も教えてくれないセクシュアリティの変化について打ち明ける。
Rv
Ghent, BE
NO
translated by Nozomi Otaki

この記事はVICE Belgiumに掲載されたものです。

私は長年、自分のヴァギナと安定した関係を築いてきた。7歳のときに自転車でひっくり返ってハンドルに着地したことから12歳で経験した初めてのひどい生理痛、子宮内避妊用具を装着したときの耐え難い痛みまで、〈彼女〉と私は多くを共にしてきた。

しかし最近、私たちの関係は変わった。不思議なことに、出産中は彼女のことをほとんど気にしていなかった。看護助手に会陰切開(膣口と肛門の間を少し切り広げること)をしなければならないと告げられるまで、彼女がまったく未知の試練を与える存在になるとは思いもしなかった。経験者として断言するが、たとえほんの少しの切開でも、出産後数日は地獄を見ることになる。

分娩後初めての入浴では、赤ちゃんに悪態をつきたくなった。出血多量で死んでしまうのでは? そもそも陰唇はまだ残ってるの? 2日目にはもうひとりの子どもが生まれた。ナプキンに落ちてきた、赤ちゃんほどの大きさの血の塊だ。「重さを量りますね」と助産師は私に言った。結局その答えは聞けずじまいで、この光景は今も脳裏に焼きついている。

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その後数日間で、身体はだんだん回復していった。2週間後には、激痛がようやく消えた。しかし5ヶ月経った今でも、シャワー中ですら自分のヴァギナや外陰部に触れられない。〈彼女〉は赤の他人になってしまった。私たちはつながりを失ったのだ。ボーイフレンドには何もかも出産前と同じで、少なくとも〈彼女〉は同じくらいきつい(本当にそんなことがありえる?)といわれたが、私は今のところこの友人を無視し続けている。

胸の垂れた母親の自分が魅力的に思えない。そして痛み。まさに激痛だ。他のひとも同じくらい強い痛みを感じているのだろうか。それとも単に私が怖がりなだけなのだろうか。

「出産中、自分でも見えるように身体の前に鏡が置かれました。美しい瞬間でした」と19歳で母になった現在30歳のフェリシア・アッピアは回想する。「アベルの頭がほんの少しだけ見えましたが、まだ身体のほとんどは私の中にありました」

息子を初めて見た瞬間から、彼女はしばらく自分の性器を見ることはなかった。「もう一度自分のセクシュアリティと向き合い直さなければならないなんて、誰も教えてくれませんでした」とアッピアは訴える。「1年くらい経ってようやく、身体のこの部分におしっこや出産以外の役割があると気づいたんです」

幸い、アッピアは安産だった。膣の上部に陰核に向かって少しだけ裂傷ができたが、彼女は若く、たった2日後に自らの意志で抜糸した。同時に痛みのピークも過ぎた。しかし、彼女が若いということは、このような気まずい悩みについて誰にも相談できる相手がいないということを意味していた。「養母は子どもを持てなかったし、友だちはみんな他のことに夢中で、それはつらい体験でした」と彼女はいう。

1年半前に出産した30歳のソフィー・ウェットンも、会陰切開を経験した。彼女も私と同様、この処置によって疎外感を覚えたという。出産後3日間入院した彼女は、その間一度もパンツを履けなかったそうだ。「病衣の上にバスローブみたいなものを羽織って過ごしました」

それ以来、彼女は身体を洗うときを含め、一度も自分の性器に触れていない。「分娩中、まだほとんど出てきていない赤ちゃんの頭にそっと手を置いてみたんです」と彼女は回想する。「すごく嫌な感じがして、すぐ手を引っ込めました。あのベタベタの頭が気持ち悪くて……」

ウェットンは出産前に自分の身体についてもっと知っておくべきだった、と語る。しかし、キャロライン・クリアド=ペレス著『存在しない女たち』などの本からもわかるように、学問の世界は歴史的に、正しい情報の拡散だけでなく女性の身体にまつわる研究にも失敗し、男性の人体構造を基準として定め、そのふたつに生殖器以外の違いはないと仮定してきた。このようないわゆる〈ジェンダー・データ・ギャップ〉は今も私たちの生活に根強く残り、希少性に関係なく、性にまつわる身体の問題を抱えるヴァギナを持つ人々は、それを痛感している。

母乳育児、妊娠線、骨盤底筋に関する知識など、新米ママとしてすぐに学び、実行しなければいけないことも挙げればきりがない。

さらに、ヴァギナや外陰部、自分自身、赤ちゃんだけでなく、〈精子提供者〉にも注意が必要だ。これは当然のことだが、ウェットンが指摘するように、実際は口で言うほど簡単ではない。何しろ新生児の世話にはすべてを捧げる必要があるのだから。「私たちの性生活も私の身体もいつかきっと元どおりになる、と(パートナーを)安心させなければいけないという義務感に駆られました」

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「この嵐のような最初の時期には、セックスのことを考える余裕なんてありません」とアッピアは続ける。「とにかくクタクタですから。数時間の睡眠はとても貴重で、セックスのために1時間だって犠牲にしたくありません」

出産後はたいてい最低6週間は性行為を控えるようアドバイスされる。私は妊娠中は体調も良好で健康だったので、6週間は長すぎるように思えた。しかし、今は新米ママとして、子どもが生まれてから短い昼寝を1回しかできていないように感じる。そして記念すべき6週間後になり、静寂が訪れた。

ベッドに潜り込むと、処女膜がしぶとい雑草のように再生しているのではないかという恐怖心が襲ってきた。パートナーは、まったくその気がなく、どうにか身体を洗い終えた私を誘うことに成功した。ウェットンも元に戻るまでに時間がかかったという。彼女は出産後3ヶ月も、特にトイレに行くときに膣痛に悩まされた。「6ヶ月後には、セックスを再開する準備ができました」と彼女はいう。「身体的にも精神的にも必要な時間でした。もう自分には魅力がないような気がしていたので」

産後の性欲の不一致について、ウェットンは性行為をパートナーとの関係を維持するための「一種の義務」として捉えるようになったという。「私とヴァギナの関わりは、ほとんど事務的です。新たな命を生み出し、それを維持するだけ」とソフィーは語る。まるで50代の主婦に向けた女性蔑視的なアドバイスのようだが、彼女が言うと説得力がある。

産後のアッピアは性行為への興味を失い、他人のために何かをすることにうんざりしていた。彼女も再開するまでに6ヶ月かかったという。「大げさでなく、産後少なくとも1年は裂傷に悩まされました」と彼女はいう。「マスターベーションをする気にもなりませんでした」

私たち全員にとって、この新たな身体はさまざまな疑念や不安を生み出した。アッピアは身体の見た目の変化に違和感を覚えたという。「誰かに会うと、こういう思いが湧き上がってきて私を苦しめました。相手が私のヴァギナがどこかおかしいと気づくんじゃないか、と。」

「いざ再開してみると、行為中はまったく痛みを感じませんでした」とアッピアはいう。実際、彼女のパートナーとの生活はずっと改善したという。「息子が生まれてから、パートナーとの距離がぐっと縮まりました」とウェットンも続ける。「絆が深まったんです。人生も充実して、幸せな気持ちでいっぱいです」

アッピアも、性生活が改善したと考えている。「年齢のせいか、それとも今の交際相手が女性だからかもしれませんが、セックスでずっと快感を得られるようになりました」と彼女はいう。「自分にも、ヴァギナの見た目や感覚にも満足しています。ヴァギナと私は波長が同じなんです」

ウェットンとアッピアとの対話は、明るく希望に満ちた終わりを迎えた。しかし、私たちがヴァギナや外陰部との関係について話すことは必ずしも簡単なことではない。子どもをもてば、セクシュアリティを含めてあらゆる物事が変化する。それでも、社会全体でめったに話題にのぼらないからといって、それを話してはいけない理由はないのだ。

母親として、私たちは今も自分の身体に愛着を持っているが、お互いを探る時間が必要だ。その再発見は、ペースも内容も人それぞれだということを忘れずにいたい。